ネパール植林日記−2008年3月24日〜4月5日/大森弘一郎

 この経験が会報に印刷されるのは来年の3月になるでしょう。それには長谷川博文さんの詳しいデーターも出るでしょうが、その前に早くご報告したいのでホームページに載せます。関心をお持ちの方は、会に近寄って様子を見てください。

 薮椿の植林で長谷川博文さんとネパールへ。そこであった植林にからむ成果について報告します。持って行った種子は昨年(2007年)の秋(9月)、主に木の枝から採ったもので極力汚染が無いように気を付け、多湿にして冷蔵庫保管(家庭用冷蔵庫で6度目標)しておいたものです。総数は13000粒で、これが何らかの形でカトマンズ市とポカラ市の周辺に植えられたことになります。乾かさないで数日内に植えるように指示しているので、発芽率は高いものと思います。冷蔵庫から出して数日で発芽したものもありました。

3月26日
 まず東京からどんなにやっても連絡のつかない、やっと1回話の出来た、スニールさんにうまく会えることが重要であって、マムスガーデンホテルからも電話が良く通じない。回線不良は良くあることなので驚かないが、それでも運よく通じて会うことが出来た。 当会の賛助会員になってくれて、今回から無報酬で助けてくれる。彼の持っていたポカラ計画(川喜田さん提唱の自立開発の発展計画の名称)に一脈通じるもので、喜んでくれた。リトルポカラ計画だと話合った。

3月27日
 前回訪ねたペワタール対岸のアマドゥー村に行く。クリシナ・グルンさんとその息子のラジュ・グルンさんその他。ラジュさんの案内で彼らのホテルの下の畑の一角、約1m==に種子を植えてくれることになる。前回のはポットで3本の育苗に成功。今度は種からやってうまく行ったらそこから間引いて別に移す考えで。 ここで重要なことは、カメリアキッシーに良く似た木があると言うことが判ったことだ、硬くて鉈の柄等に使われるし、昔種を取って2kgぐらい油にしたことがあるというあいまいながら話があった。 その木の現物を見ると小さな(5mmぐらい)の花芽があり、花期は4〜5月だと言う、マニュアルにある12〜1月とは違う、鑑定のために葉を採取した(長谷川が手配する)。

   

 もし椿の種が自生してなら、ジャポニカがうまく育つ可能性と、交雑の危険性の両方があることになる。 村の下の畑に苗床を作って植えた。
 ポカラのナーセリー Agriculture Research Center に。400本ほどの苗が並べてあるのを見せられたまでは普通、その後奥の圃場(田圃の後で西の丘のふもと)へ案内された、長谷川が苗を植える間隔は4mだと回答した(成木の間隔と言ったつもりで)のを忠実に実行してくれていて、0.5haぐらいの広さに240本、これに日射避けの木の枝をていねいにかぶせてある。

 

 それぞれに豚の糞、鶏糞等、条件を変えた対象区をつくってあるらしい。計画書も立派で、これを上に上げて3年間の予算化をしてある。せっかくやってくれたこの作業を上手に展開してもらえるように願う。別に1m間隔、10本の密植(種の直植えと苗からの移植と)もアドバイスした。 3年間の予算を取ったがその後を心配している、我々もポケットマネーの行動である故、過度に期待されないように注意して話しているのだが、ここの自発性を起点に発展させ得る可能性もあり、その場合は何かの作戦が必要だ。

 

 ここでは成木から種子が採れて、油が絞れて、収入になることを確認してから、農家に勧めるとの考えのようで、誠に確実だが10年以上かかる。そのとき改めて種から始めるので無いように苗をつくっておくのが良さそうだ。 4m間隔に1本の現状に対して、1m間隔1本と4m間隔10粒を勧めたが、さらに次は20cm間隔1粒を勧めて、10年後に備えよう。

3月28日
バイリ村へ。途中の悪路は歩いた方が楽だった。

 

 村長のビスロー・ポカレルさんの家に行く。村の皆はトウモロコシの植え付けに行っていて不在。ナーセリーという考えが強かったのか、ビニールポットで発芽させており、貧相なのが3本残っていた。苗で渡したものが、誰の所に行きどうなったかまるで判らない。しかし、前回コーヒーの種子が出来ていて喜んでいたのに対し。今回は実の焙煎を庭にある蒔の炉でやっていて、子供を含めた家族総出でおいしいコーヒーが出来るまでになっている。
 薮椿が1本活着しているところに案内してもらった。村民がそれぞれ持ち帰っているので植えて有るところの現場は見ること出来ず。 ナーセリーの意味を、遠くに運ぶための苗をポットに作ると勘違いしているようなので、指導して苗床を作ることにした。日の当たる所と、日陰になるところを2カ所選んで300粒ぐらいずつほぼ10cm間隔で植えた。今度は子供たち買い熱心で、水も手入れもやってくれるだろう。雨季までどれくらい飽きないかが鍵だ。この苗床から間引いてそれを他に植えて広がる。そんなことが起きそうな雰囲気。焙煎したコーヒーも悪くない。

 

 この村で、水、肥料、等を自ら工夫してくれて成功することを祈る。

3月29日
ダンプスへ、舗装道路を飛ばし、悪路を登る。昨日のはマツダ、今日はスニールさんの勧めでコロナ。30歳ぐらいの車が楽々と登る。最も登る前にラジエターに冷たい谷川の水を入れるあたりはさすが。その車はご覧の通り立派な現役である。ダンプスの尾根筋で車を降りて歩く。前回と通った道、ヒルトップのゲストハウスで、彼女も覚えていてくれた。石垣の西側の隅に植えたもの(苗か種か不明)を見せてくれる、大きな葉が4・5枚出ていて、籠をかぶせる等大切にしてくれているのに感心した。お茶代をいらないという(置いて来たが)。

 

 村長の経営だというダウラギリ・ビュウ・ホテルに入る、小さく1本活着しているのみ。

3月30日
朝のマチャプチャリの景色は素晴らしい。東斜面に良いところがある、ここを勧めた。 その後選挙運動で村民が集まる所で、村長が薮椿に託した将来への夢を説明。昨年頼んだ学校の先生が良くやってくれていて、「月の家」の東面の下など見事なものだった、彼の力でこれからこの周辺は良くなるかも知れない。 帰りヒルトップのおやじと話す、昨年は彼が人を集めてくれた、この周辺はこれから進むかも知れない。 帰りは石畳の道を下った。

3月31日
 ポカラ国際山岳博物館へ、jn50で使ったエベレストの大きい写真を館長のライさんに渡し、後をまかせる。次回どうなっているか楽しみ。 柵沿いに20本並べて苗が植えてあり、ほとんど活着、これは前回上げた苗の全て。

 

 大木神父様の所は新しい建築が進んでいる、椿は鉢植えで全て順調とのこと。和田さんの所も、成長が遅いが全てOK。まずはこれでポカラでの作業を終わる。

4月1日
 のんびり1日、資料整理。

4月2日
 ポカラ→カトマンズ 移動だけでつぶれてしまった。

4月3日
 ゴダワリのナーセリーへ、皆選挙と町での展示会で出払っていて、15年ここでやっているというオバサンに教えて、一緒に畑に植えた。昨年の種からの苗で良い物は殆ど売ってしまったらしい。

 ゴダワリ植物園の研究所のPuran Prasad Kumi氏に会えた。A4で534ページ(英文)の「ネパールに於ける薬用植物概説」(長谷川購入)の著作者で、ネパールには天然の椿科の植物はいないと断言した。有るのは園芸用の外来種のみであると。

 ハッティバンリゾートの近くの Chlinakhel Village の Nursery Incharge 責任者の Durga Bahadur Kuwar氏に400粒を渡した。ここは農民に無料で苗を配る所で、喜んで受けてくれた。

 

4月4日
 シバプリで、シバプリの管理をしたいという男に会った。シバプリはこれ以上やらないから、椿を下の畑でやったらどうかと400粒渡した。 シバプリの帰路、カトマンズの Elviras Children Home という孤児院三カ所の内の一カ所、に行き、ここは苗作りに熱心なので600粒おいて来た、子供たちと熱心に育ててくれるとうれしい。

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 ネパールに薮椿の植林に行って来ました。あえてネパールにとっての外来種を持って行ったのは、農民が木を植えてそれを切らないのには、実が成って、その実の保存がきいて、収入になる木(金の成る木)として向いていると考えたからです。カメリアジャポニカという日本列島にしか自生しない木です。今は外国で園芸種の交配の母樹にされていますが(例えば椿姫の椿)良い実のなるのは原種です。 利島では、150haの畑(林)から10kl(年により違い5〜30)の油が取れています。 ネパールにとっての外来種のヤブツバキがこの地と社会にうまく適合してくれるか。農業研究所(Nepal Agricultural Research Council/Malpatan、Pokhara)のタパ技術幹部(Krishna Bahadur Thapa Technical Officer)が最も熱心にやってくれていますが、結論には10年以上かかるでしょう。病虫害の持ち込みが無いように木から取った種だけで進めています。現地に椿の種が有ると交雑の危険が考えられます。これには気を使い村を回りながら調査しました。5カ村の中で1カ所近いものを(ネパール東部の山地に分布している可能性の有るカメリアキッシーであるか葉を調査中)見つけましたが花季は4〜5月だと言います。ゴダワリ植物園の先生(プラン・プラサード・クミ氏)はネパールには椿は自生していない、有るのは全て園芸種だと断言するのを今は信じて進めようと思います、安全のために人の居住地域に限って進めることにしています。
 地球環境問題の解決の一つの方向には各地域での自発植林があります。これはネパールでの植林が住民の自発で行なわれないかとの思いで、日本のヤブツバキの種子を持ち込んで、彼らが自分で育てることで実が成って、100年間実収入が得られ、なお二酸化炭素吸収源になってくれるという、筋書きで進めているものです。これが少し進んでいます。以下は自分のメモ 地球の上の物は地球に住む者に共有されたものだと考えると、こうして、利益を上げつつ二酸化炭素の吸収をして貰う、プラスとマイナスを見合う形で分配するルールは出来ないかと考えます。
 地球のCO2を吸収してくれるのは葉緑素、固定してくれるのは樹の幹。 排出を減らすのは人間の活動。活動力を変えずに排出を減らすことは出来る。 同じことをするのに排出を減らす、排出をしつつ吸収をすることは出来ないか。 排出のないエネルギーは得られないか(太陽、地球) 金を稼ぐのに熱心な如く、植林に人が熱中する方法はないか、楽しむのに熱心な如く Jリーグのように、野球のように、オリンピックのように、ノーベル賞を目指すように 多分それは評価と報酬だろう、又は満足だろう。 10年後を期待して植えてくれる人も居る。収穫は別の人になる訳だが、その人には未来の期待を夢見ることが出来る人である。 66億人が少しでも透き間が有ったら、樹を植えて水をやって、それが報われる方法はないか。(樹からのバイオエタノールを高く買う、樹の蓄財で税金を安くする) 植わっている木 固定された木  これの上昇分を測って評価に変えられないか 切る木 植える木 人工衛星、リモートセンシング、これで解る。ハワイのマカダニアンナッツまで育てている